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昔話が教えてくれたこと

 コロナ禍の中、物語の必要性を強く感じています。特に口承で伝わっている昔話の力に改めて魅せられています。

 昔話には時代を越えて、生きることの普遍的なエッセンスが詰まっていると思います。

 この世に生まれ落ちた瞬間から、全ての人が等しく死にむかっているというこの動かし難い事実を、昔話は軽やかに語って見せます。

 そして生まれる場所も環境も選べないことを、どんな時もどんな目にあっても死ぬまで生きるしかないことを、昔話はてらいもなく語ります。

 命は尊い。それは不条理を物ともせずに人は生きようとするからだということを、昔話は密やかに内包しています。

 努力が報われるから努力するのではなく、生きるというのは本能的なもので、たとえ報われなくとも足掻くことこそ尊いということなのだと昔話は直接的な言葉ではなく物語として伝えてくれています。知性と本能の両立を昔話は教えているのではないかと思います。