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何が読書に繋がるのだろう その6

 岩波子どもの本は、全て同じサイズの本として出版されています。単価を下げ、子どもたちに読んでもらいやすいようにという当時の岩波編集部の方針だそうです。

 しかし、価格以上に、自分で読みはじめた子どもにとって魅力的な特徴を持っていたと思います。

 一つ目は、縦書きに統一されていた点です。当時の教科書と同じサイズで、縦書きというのは自分で読み始めた子どもにとって一番読みやすいスタイルだったと思います。

 翻訳された作品もあったので、見開きが逆になり、印刷の際、技術が必要になったようですが、それでも、縦書きは自分で読むためのものというメッセージになっていたと思います。 

 実際それまで私が親しんだ絵本は、日本の作品でも横書きの本が圧倒的に多かったので、縦書きは新鮮で自分で読んでいるという感じがありました。

 二つ目は、ハードカバーで多色刷りの挿絵が入っていた点です。コストを考えればハードカバーや多色刷りの挿絵は割愛されそうな所ですが、そこをあえて守ったことは、読み手に本の価値を伝えることにつながったと思います。

 本は、読み捨てるものではなく、手元において何度も読むもの、大事なものという感覚は、岩波子どもの本が作ってくれたと思います。

 三つ目は、挿絵としての絵の役割を体感させてくれた点です。

 岩波子どもの本版として出版された本は、元は大型の絵本だったものも混じっています。

 それを岩波子どもの本として出版する際の絵の処理の仕方は、絵を挿絵として捉え直していると思います。

 絵本は絵が語りますが、挿絵の場合は文章も大いに語るので、絵本ほど情報量が多い絵が必要ではないということが、岩波子どもの本を見るとわかります。

 翻訳もので、新たに日本の画家が絵をつけたものなども、日本の子どもに寄り添って、物語の背景となる国の印象が伝わるよう、挿絵が力を貸していると思います。

 このように、岩波子どもの本の絵の扱い方はレイアウトも含め、挿絵として強く意識されて作られていて、結果読み物としての存在感を強めていると思います。