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子どもの年齢を意識する

 子どもの読書は字を読めるようにして、本をとり揃えておけば読むと言う単純なものではないと思います。

 かといって読書の仕方を教え導くものでもないと思います。そして自分で読む以外の方法で読書のおもしろさを教えられるわけでもありません。

 そこで読書に導く様々な取り組みが生まれては消えていきます。目指しているのが読書することなので、本来なら粛々と継続していくことが重要なはずですが、次々新しい取り組みが生まれることから、なかなか子どもたちを読書に誘うことができない現場の苦しみが見て取れます。

 様々な取り組みを見てきて思うのは、どんなに素晴らしい働きかけでも、その手法が使える子どもの年齢を考慮に入れないと、成果が出ないのではないかと言うことです。

 不思議なことに、読書推進の取り組みは、同じものが大学から小学校まで一斉に行われる傾向があります。まさしく流行という言葉がぴったりの印象です。それだけ小学校から大学まで、どの段階でも不読に悩まされ、どこかの現場で成果があったやり方に頼りたくなるということでもあると思います。

 けれど、その手法が生きるのは、どの年齢かという点を意識しないと、思ったような成果につながらないのではないかと思います。 そしてその手法が成功した年齢以外で成立させるために手法をアレンジすること自体が、そのやり方の力をそぐことだと思います。

 私のストーリーテリングの師である藤井早苗先生の教えに「あなたがそのおはなし ができるのは、そのおはなしをきける聞き手を育てた、他の語り手がいたからだということを忘れないように」というものがあります。これは読書推進にも当てはまります。

 私たちがすべきことは、新しい取り組みに心惹かれたら、その取り組みが成功した年齢までに、今私たちが向き合っている年齢の子どもたちが何をしたら良いか考えることだと思います。

 子どもの年齢を意識して新しい取り組みに喜んで参加できる力を子どもたちにつけていくことが大事だと思います。