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慌てず騒がず

 図書館員は、多種多様な資料を収集し整理し保存して提供している図書館で仕事をしていますが、利用者主体で受身の仕事も多く、自分が何のために何をしているのか見失ってしまうことがあります。

 また利用者がいるかぎり、本は探され、途切れなく書架から出され、出された本は図書館員が書架の所定の位置に戻さなければなりません。途切れなく続くこの作業は、貸し出しや配架などの機械化を生み、蔵書検索が自宅でもできるようになった今、図書館員の数の削減を主張する人がでてきています。

 こんな中では、手っ取り早く目に見える成果を感じられることをしたくなりがちです。それで評価がしやすく、結果がわかりやすいものが選ばれ、参加者の数が判断基準になるイベントだったり、目に見える変化が味わえる装飾だったり、といった蓄積を必要としない、今に限られた活動を優先的にやりたくなります。

 けれど、図書館は時間をかけて熟成される機関です。長期的視野に立ってコツコツ積み重ねることを厭うと、図書館の機能が低下していってしまいます。恐ろしいことに機能の低下も、すぐには表面化しないので、気がついたときには、無料滞在の場所、貸本屋、イベントホールといった図書館でなくとも成立する代替えの場所になっている可能性があります。

 またいけないことに、特にコロナ禍以前は、ただ本を貸す場所じゃない取り組みをしていることが評価される風潮が強くなっていました。

 ただ本を貸していると言われ、評価に繋がらないと思いがちな図書館の営みは、流行に左右されず、日常生活の一部として借り続けてくれる人たちと一緒に図書館を育てる作業です。そして利用する人を増やし、利用し続けていく気持ちを育てるのは、蔵書です。一発逆転を狙わず、どんな状況でも慌てず騒がずいけたらいいと思います。