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図書館ができること できないこと その1

 図書館員は、利用者の求めに応じて資料を探す、それも自館だけでなく膨大な資料群から見つけ出すのも仕事の一部です。

 そのために仕事に熱心に取り組めば取り組む程、利用者の期待に応えたいと思うようになります。

 けれど、利用者の期待に応えたいという想いは、時として図書館ができることを、見失う危険があります。

 きつい言い方をしていますが、いつも警戒して欲しいという訳ではありません。

 利用者が欲しい資料を、利用者ご自身の中で完結する使い方をされる場合や内容が思い定まっていて資料のタイトルが特定できない場合は、図書館員の熱意はプラスに働くと思います。

 図書館員の使命感が図書館のできないことを踏み越える危険があるのは、その資料を自分以外の人に使いたい場合、資料を使った結果を期待している場合は注意が必要です。

 図書館が利用者主体の姿勢を貫くのは、その本がその人にどういう変化を起こすのかは、誰にもわからないからです。

 同じ人が同じ本を読んでも、読むタイミング、年齢やその時の心境によって受ける印象が変わるのは、ご自身のことを振り返ってみると想像しやすいと思います。

 そして、一冊の本で価値観が変わるほどの変化が起きることはほぼありません。本は特効薬となるほどの劇薬ではないので、安心して楽しめるとも言えます。

 しかし直接的な効果が期待できないからと言って、読書の必要性が薄れる要素にはならないと思います。時間をかけて熟成していく、実に人間らしい営みの一つとして、読書は大切だと思っています。