『赤ずきん』ビアトリクス・ポター/再話
ヘレン・オクセンバリー/絵
角野栄子/訳 文化出版局
を読みました。今更解説するまでもない、そうそうたるメンバーが揃って作られた絵本です。
装丁も美しく、本体のカバー絵と、上にかかっている紙のカバー絵が違うという凝り方です。おまけにカバーの活字は擬似エンボス、タイトルと作者は金文字という念の入れようです。
ところが、この文句のつけようのない絵本を読んで、満足したかというと、肩透かしを受けたというのが第一印象です。
この赤ずきんはペロー版の再話でした。
ペロー版の赤ずきんは、赤ずきんがオオカミに食べられておしまいなのです。そして最後にだからひとりで森へいってはいけないという教訓がついているのがペロー版です。
教訓とセットのものなのですが、ポターは教訓の部分は割愛して再話しています。
けれど、そして、それが赤ずきんのさいごでした。という締めの言葉は、ポターらしくて、真実を真実として伝えている感じがします。
ただそしてポターが作家であるということが影響したのか、物語の進行に集中できないようなもたつきを感じました。
説明しなくていいところを説明しているというか、バランスが悪い気がしました。
絵も、ポターを意識したのか、オクセンバリーもイギリスの人のせいか、まるであひるのジマイマが歩いていそうな風景が広がり湖水地方を彷彿とさせました。
美しいのですが、個人的には文章と一致している感じが薄いと思いました。
そしてオクセンバリーが文章から想像して書き加えたものは、読み手の助けになるというより、オクセンバリー自身を感じさせるものだと思いました。
昔話絵本は、どこに焦点を当てるかで、仕上がりがかなり変わってくる、結構気難しいものなのだと思います。