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より複雑になっていく

 年齢を重ねると、知識が増えて、物事の良し悪しがくっきりしていくものだと、漠然と思っていました。

 実際人生の折り返し地点を大きくこえてみると、知識が増えても、いえ増えたからこそ、簡単には結論が出せないことばかりになっている気がします。

 この感じは、図書館のイメージに近いのではと思います。

 図書館は、様々な知識を取集し、保存し、提供しています。

 様々な価値観を飲み込んで、多様性を提示しているので、答えを求めている人にとって、わかりにくいと感じられてしまうかもしれません。そして、図書館自体は、結論を出さないことも、魅力と感じる人と曖昧だと感じる人と分かれるかもしれません。

 けれど、物事は複雑で、簡単に断じることができないことや、立ち位置によって同じものを見ても良し悪しが変わることが多いことを、年齢を重ねてきて感じています。

 そして生活を共にしている家族や親しい友人でも、思わぬ価値観の違いに驚くことがあることは、誰もが経験することかと思います。

 ただ、SNSが浸透し、短い言葉で断言することを心地よいと感じる人が増えている気がします。断言することが迷いなく答えを導けていると感じ、それを知識があって専門性が高いと位置付けているように見受けられます。

 加えて、SNSの特性として同じ考えの人が集まりやすく、考え方が一色になりがちで、疑問が生まれない土壌が作られやすく、賛同できることが相手を尊重している感じにすり替わっているように見受けられます。

 答えが出ないことや意見が違うことをマイナスと捉えずに、考えていけることも時には必要だと思います。

 そのためにも図書館のように時間をかけてじっくり考える場が、以前に増して必要だと考えています。