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混ぜると和える

 料理研究家の土井善晴さんが、混ぜると和えるは違うとおっしゃっていて、妙に納得しました。言葉はそのままではありませんが、混ぜるは材料が均一になるまできっちりかき混ぜることで、和えるはフワッと混ぜることだと説明されています。この違いは料理をする人なら感覚的にわかることだと思います。

 そしてこの感覚は、話し合うことが敬遠されがちで、意見を交わすことにリスクを感じてしまう時の答えのような気がします。

 多様性を認めることに関して基本反対する人はいないと思います。自分が自分らしく生きたいという点でも誰も異論はないと思うのです。

 けれど、他の人のやったことを非難したり、否定したりはしなくても、自分を肯定するための発言が誰かを貶めることになる場合があることは、ままあることなのだと思います。

 この辺を厳格に、決して失言してはいけないと思うと、話すことすら怖くなります。お互いが尊重しあい認めあうはずが、発言を控える状態になっていくのは、寂しいことだと思います。

 たとえ、相手を傷つける発言になったとしても、私は悪くないと開き直るのではなく、自分の感覚をお互い伝えあえる関係を築いていくことで、本来の多様性を認めあう関係になれると思うのです。

 以前はわかり合うということは、混ぜることで、一つになることだと思っていましたが、きっと和えることなのだと思うのです。それぞれの素材を活かし、ふわっとまとまることが大事だと土井さんの言葉から思いました。