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人生100年

 コロナ禍で、早急に対応しなければならないことが増えて最近あまり耳にしませんが、長寿化を視野に入れて、人生100年で計画することが大事だと言われるようになってきました。定年が60歳では、生活が成り立たないだろうといわれ、働き方の見直しや老後資金をどう構築していくかなどが話題になっています。

 生活していく上で基盤となる経済的な問題は、もちろん解決しなければならないことですが、もし人生100年を考えるなら、大切な物を最近読んだ本で気づかされました。

 

 『まつを媼百歳を生きる力』石川純子/著 草思社

 

 この本は、明治27年生まれの伊藤まつをさんが76歳の時ご自身の半生を綴った『石ころのはるかな道』を出版され、それを読んだ石川純子さんが伊藤まつをさんを訪ね、それからの聞き書きをまとめたものです。

 聞き書きのため、お話しされたままに文章に起こしてあり、方言のせいなのか、はじめはとても読みにくいと感じました。けれど読み進めていくと、聞き書きだからこそまつをさんの姿が浮かび上がり生きた人間の歩みとして伝わってきました。内容は読んでいただいた方がいいと思いますので、ここでは書きませんが、100年という時間は、生活形態や当たり前が大きく変化することを痛感しました。知識として知っていることと、生活には隔たりがあり、様々な困難をすべて受け止めて、生活のしずらさを自分の手で変えられるところは変えていき、最後まで考え続けたまつをさんの生き方に圧倒されました。100年を生き抜くには、環境に適応していく力が必要で、それを支えるのはしなやかな心と身体なのかもしれないと思いました。