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図書館経営

 今まで図書館運営と言っていたことが、図書館経営という言い方に変わってきています。司書資格取得のための科目でも図書館制度・経営論という言い方をしています。

 基本的な考え方として、図書館を動かしていくには、運営費も必要で、予算の理解なしでは、計画が立てられないので、運営という言葉より経営の方がバランスが良いとの判断なのではないかと思います。

 ただ行政は、経営という言葉と相性が悪い感じがします。行政は税金の再配分をして住民の生活を支えている組織です。経営は、どう収入を増やすかという問題を避けて通れませんが、行政がやろうとすると、どう税収を増やすかということになります。ただ増えた税収入の使い道は最初に提案された通りになるとは限りませんし、増税を成立させる難しさは、消費税の経緯を見ていると分かります。

 うがった見方かもしれませんが、経営という言葉にニューヨーク公共図書館のような、アメリカの図書館像を感じます。ニューヨーク公共図書館は、図書館が独立組織として経営されています。経営費の公的資金の割合は半分以下、あとは図書館が資金を捻出しています。独立機関だからこそ、あれだけの充実した図書館サービスが成り立っていることは尊敬に値すると思っていますし、市民に支持され信頼されていることは素晴らしいと思います。

 けれどその反面、それだけ図書館が背負っているものがアメリカにはあるのだとも思います。医療サービスすら自己責任で自分でなんとかしなければならないというルールを国民が受け入れているからこそ、アメリカンドリームの基盤として図書館の必要性が国民に浸透しているのだと思います。

 日本の現状は、アメリカほど個人の独立心と自己責任意識が浸透しているとは思えません。地域性を大事にふんわりとまとまることをよしとしている印象さえあります。また制度的にもアメリカに追従している感じではありません。

 図書館に何を求めるのか、誰が主体となって運営するのかの議論が充分でないまま、経営という言葉が一人歩きし、経営努力の一端として、予算の圧縮を目的とした公共図書館の委託運営をなし崩しに認めていくことに危機感を覚えます。