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おとなでしょ

 私は、子育てに向いていないタイプだと思ってきました。予想の斜め上をいく子どもの言動に振り回されて、どうしたらいいのか分からないことばかりでした。当時はなぜ私が嫌だと思うことばかりやるのだろうかと気持ちまで追い込まていました。側から見たら微笑ましいことでも、私にとっては穴があったら入りたい感じだったのです。そして身体の使い方を指導してもらっている先生に子育ての相談をしていました。けれど子どもの言動を訴えても「そうきましたか」とそれがどうしたという反応でした。そして「あなたおとなでしょ」とよく言われました。けれどその真意を考えることをせずに見当違いの言い訳で自分を慰めていたのだと思います。「おとなでしょ」は、なぜそんなことで立ち往生しているのかという指摘だったのだと思います。先生から見ると私の悩みは子育ての悩みではなく子ども同士の喧嘩のように見えていたのでしょう。子どもと向き合うことは子どもの目線に合わせることだと思い込んで、うっかり自分も子どもになっていたと今ならわかります。そしておとななら、子どもの出方に合わせて対応を変えていけるはずだというエールでもあったと思います。 

 期せずして子どもに関わる仕事をしています。私にとって「おとなでしょ」は今も困ったときに思い浮かべる言葉になっています。先生のように「そうきましたか」と子どもの言動に動じずに受け止めていけたらと思います。