· 

読書は習慣

 読書は習慣だと感じています。洗顔や歯磨きといった生活のリズムを作る生活習慣ほどの厳密なものではなく、ふとしたときに本でも読もうかなと思えることが私が感じている習慣です。

 習慣として日常に組み込もうとすると、問題となるのは自発性と時間だと思います。たくさんの楽しみの中から読書を選び、時間を取らなければならないからです。

 読書は時間と手間をかけないと楽しめないものです。けれど読書の楽しみを知れば、時間を忘れて読みふけるということは特別なことではありません。ですから私は子どもたちが自分で読んでおもしろかったと思って欲しいと思っています。そしてそれは一回では足りず、繰り返し継続して続くことが習慣につながると考えています。注意しなければならないのは、子どもが1冊目から強烈に読書に惹かれることはほとんどないということです。次の本を敬遠してしまわない程度のおもしろかったでいいのだと思います。特にひとり読みをはじめる時期は、おもしろかったより次の本を手に取ろうとする意欲の方が重要だと考えています。

 ただ習慣や次の本に向かう意欲という考え方は、新しいものではありません。例えば次の本に向かう意欲だけを刺激する本というのは実在しています。よくあるのが20冊30冊とシリーズになっているものです。子どもたちの好みを反映した絵をつけ、活字も子どもたちが敬遠しないよう配慮され、子どもの気をそらさず一気に読める内容のため、子どもたちの支持を集めています。

これらの本だけを親しんだ子の中に、その手のシリーズ物以外を読まない子が一定程度生まれます。学年が上がっていくにつれて本離れが進むと言われる原因の一つがここにあると思います。シリーズ物を読んでいると、子どもたちは冊数をこなすので、読む習慣がついたとおとなは判断しがちです。けれどシリーズ物以外を読んでいなければ、読む習慣になっていきません。焦らず一歩づつしか進めないのが読書の習慣を作ることだと感じています。