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違いを知る

 私は、25年ほど前から小学生に本の紹介をしています。今で言うとブックトークですが、今のような方法論の本があったわけでも指南してくれる人がいたわけでもないので、予備知識のない状態で始めました。自己流ですから、厳密にはブックトークの範疇に入っていないのかもしれません。手探りで子どもの反応だけを頼りに始めた分、心に刻まれたことがあります。

 ある時「魔女」をテーマに2年生に紹介しました。私は本を選ぶ段階から自分の予想以上に魔女の本があるので、目移りしていました。そして魔女を表現するアプローチや絵が多種多様なことに感心していました。ですから子どもたちがどんなに驚くだろう、様々な魔女にどんなに心躍らせるだろうと意気込んで紹介しました。けれど子どもたちは、私が本を取り出すたびに「えー また魔女の本」と心底がっかりした声を上げました。子どもにとって魔女の本は魔女の本でどれでも一緒という反応なのです。魔女の本だとわかればそれ以上の説明はいらないという感じでした。私が心惹かれた魔女の本の多様性は、かなりマニアックなものだと子どもの反応から気がつきました。おとなと子どもの興味の違いとも言えるかもしれません。特に私のプログラムでは、紹介した本を全員全冊読んでねというものですので、本来のブックトークのように気になった本があったら読んでねというやり方ではありません。その設定とも合わなかった本の選択だったと思います。

 複数の本を比較して読むことは様々ある読書の楽しみのひとつだと思います。けれど読んだ本の内容を比較したり自分の中で組み立てていくという作業は、努力せずに読書ができて本の内容を受け取り慣れるようになってからの楽しみなのだと思います。子どもの楽しみ方はおとなと同じとは限らないと学んだ出来事でした。おとなと子どもは違うことはあまりにも当たり前で、自分ではわかっていたつもりでした。あの時の子どもたちのがっかりした顔はそんな私に喝を入れてくれ、おかげで今につながっていると感謝しています。