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信じる力

 子どもと関わる時、意外と試されているのが関わっている側のその子を信じている度合いなのではないかと感じています。けれどナンバーワンではなくオンリーワンでという考え方が支持されて、個性という言葉が以前より頻繁に使われるようになって子どもは信じてもらっていると感じにくくなっているのではないかと思います。

 個性という言葉は個人の存在を丸ごと肯定するので、ありのままでいいというメッセージでもあります。この自己肯定という感覚はとても大事ですが、使い方によっては変化を否定することもあります。子どもはおとなが思うよりも柔軟性が高くこれから何物にでもなれるエネルギーの塊です。変化は子どもにとって可能性であり希望であり生きる力です。子どもの自己肯定感を育むのは個性という言葉ではなく、変化を促すことにつながる信じてもらう体験の豊富さなのではないかと考えています。

 そして個性という言葉は信じる力を曖昧にしていっているのではないかと感じています。信じるという行為には強いエネルギーが必要で信じる側の本気が試される行為なのだと思います。心から賛同していないけれど一応認めている位の感覚では子どもに信じてもらったという実感が生まれにくいのではないかと思います。子どもが満足できるような信じる力は自分を殺して子どもの全てを信じようとするより自分が信じていることを子どもの中に認めていくことで生まれると思います。子どもに関わるおとなが多い方がいいのは、多様な価値観で子どもを認めていく効用があり、様々な種類の信じる力で子どもを取り巻くことができるからだと思います。

 私は本の力を信じています。そして困難があってもなくても、どの子も必ず読めるようになると信じています。それぞれがそれぞれの信じる力を発揮できたら状況が変わっていくのではないかと期待しています。