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蔵書は悩ましい

 学校図書館も新年度を迎え、4月は何かと忙しない時期です。新1年生は4月からは図書館利用はしない所が多いので新しい顔ぶれではないのですが、新しく始まる感じがするのは学校ならではです。

 そんな4月は異動で勤務する学校が変わった方もいるので、蔵書について考えるには最適な時期です。学校図書館はひとり職場なので学校司書は悩みつつ蔵書を整えています。児童生徒や教職員の要望や予算など配慮しなければならないことは多く目指す蔵書構成の実現は思うようにできないことも多いのです。

 そこで注目したいのが異動です。担当が変わるため否応なしに学校図書館は複数の担当者が関わる場になります。図書館は協議しながら運営するもので担当者ひとりでは運営が難しいとお伝えしてきました。同時に存在しないので時差がありますが複数の担当者が関わるため客観性が生まれます。前任校との違いに頭を抱えるのではなく、まずは観察から始めることをお勧めします。どうしてこういう蔵書構成になっているのかを考えてみてください。そして前任者の目的を掴んだらその成果が出ているのかを確認してください。もちろん蔵書構成で成果が出るには時間がかかります。現時点で結果が出ているのかではなく、狙った方向に進んでいるかを見ることが大事です。こういった分析をすることで司書の専門性を見せることができるのです。

 そして図書館は蔵書が語ります。司書がことさら目的を掲げなくても蔵書を見れば、何を目的にしているのか分かります。ただ目的がコロコロ変わると形にならないのも蔵書です。学校図書館も司書の目的があまりに違うと蔵書にその痕跡が残ります。できれば上田市の学校図書館として大筋で合意できる目的が定まると仕事がしやすくなると考えています。

 学校は地域性や個性という言葉で同じことができないという考えと教育の公平性という同じことをしようとする考えが渾然一体となっています。仕事に追われていると最初の違和感が地域性などの学校の特色に飲み込まれてしまいます。学校図書館は基本は教育の公平性を支えているのだと考えています。難しいことだと思いますが、専門家として蔵書構成とそれがもたらす児童生徒の読書について考えることを意識し続けることが大事です。