· 

現場にいないこと

 私は図書館職員ではありません。私の図書館との関わりは公共図書館でおはなしの会を立ち上げたところから始まりました。そして図書館を活動の場としたために長期間図書館のありようを見てきました。担当職員が変わっていくことのメリット、デメリットを感じ、現時点だけでは評価できない図書館の特色を肌で感じてきました。子どもの読書推進に関しても利用者や担当職員の要望に応える形で講座を組み、対象年齢を変化させてきました。時間をかけて赤ちゃんから小学生までの聞き手に応えることができるスキルを積んできたのです。

 この変則的な図書館との関わり方は、定点観測のような効果がありました。職員はどうしても異動があります。同じ場所、同じ条件で観察し続けることができません。けれど守備範囲がピンポイントの活動をボランティアという立場でやっていたからこそ子どもと図書館に関して長期間の観察ができたのです。長期間の観察なら職員を異動させなければいいのではないかと思われるかもしれませんが、職員の立場では観察は難しいと感じています。職員の仕事は目標を立てその進捗状況から修正をかけていくため全てに評価が伴います。私のしてきたことは起こった事柄を評価せずに観察することから見えてきたものです。

 そして図書館職員でなかったから見えているものと、図書館員として実際の現場で見えているもののすり合わせができると図書館の向かう方向が見えてくるのではないかと期待しています。私は図書館員の経験がないため、現場の悩みや手詰まり感は想像することはできても、十分理解しているか自信がありません。ですから現場の声を聞くためにも、情報共有できる場が欲しいと思っています。これは上田子どもの本研究所でやりたいと思っていることのひとつでもあります。今年度はそのための場づくりもしたいと考えています。