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便利との折り合い

 図書館で行われている曝書が何なのかは意外と一般には知られていないと思います。図書館をよく利用される人でも、図書館の休館日が続く期間位の受け止め方だと思います。曝書という言葉自体古い言葉で、元々の意味は本の虫干のことです。使う場が限られた言葉を図書館で使ってきたこともあり、曝書という言葉ではなく、蔵書点検とか特別整理期間という呼び方が使われることも多くなってきています。けれど蔵書点検という言葉に変えたからと言って、利用者の理解が深まったかと言えば、残念ながら理解されている感じはしていません。

 曝書は恐ろしく手間のかかる作業です。図書の台帳であるデータベースと所蔵する現物すべてを照らし合わせて所在を確認するのですが、図書館の蔵書は年々増えていくものです。例えば上田図書館の蔵書数は現在約30万冊です。30万冊すべてを台帳と付き合わせることを想像してもらうとわかりやすいと思います。台帳がデータベースになり、バーコードやICタグが導入され数の管理の合理化が図られてきた経緯には数との戦いがあり、切実な問題なのだと想像できます。

 実際曝書中の図書館に入ったことがありますが、図書館は倉庫でもあるのだと感じました。ラベリングすることで綺麗に整理されているからこそあの数があの空間に収まっているのです。適当に並べたらとても収納しきれないものだと思います。そして埃はどの空間にも降り積もるものなので、普段のお掃除では手が回りきらないところが出るのは一般の家庭と同じだと思いました。家庭でも大掃除が必要なように、一斉にすべての図書を点検することは図書館でも必要だと思います。

 ただ図書館は閉館期間が長いと利用者に迷惑がかかると考えるので閉館期間を短くしようと努力します。解決方法として技術の導入ということになるのですが、利用者を含めて便利との折り合いをつけた方がいいと考えています。利用者は図書館が図書館であるために曝書期間がどれだけ重要かを知ることが大事です。そして図書館は曝書作業自体が図書館員にとって恩恵をもたらすことを意識した人員配置や時間を確保して欲しいと思います。

 残念ながら図書館員が置かれている現状はそれを許さない方向に進んでいます。まずは利用者が閉館期間を受容し待つことで便利と折り合いをつけ、図書館員は利用者が後押しした時間を効率化に流されない方向で活用できないか考えています。