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ノベルズ版

 アニメと漫画について書きましたが、今回は漫画とノベルズ版について考えてみます。

 図書館、特に学校図書館では漫画を蔵書に入れない所が多いです。上田市だけでなく他の地域においても漫画に関して選書できるほどの基準が確立しておらず予算等の問題もあり暫定的ではありますが漫画の購入をしない選択になっているのだと思います。

 そこで図書館で問題になるのが、ノベルズ版の存在です。ノベルズ版とは漫画を小説化したものです。学校は漫画の持ち込みが禁止されているところもあるので、学校で漫画が原作の小説を読みたい読者と売り上げ拡大を狙う出版社の利害が一致したという側面のあるものだと思います。そのせいもあってかノベルズ版を読む層は、元になる漫画を読んだことのない人ではなく原作を知って読む人が大多数なのではないかと思います。読んでみると登場人物や舞台背景などは知っているものとして書かれている印象です。これは原作を知らない者にとっては少々不親切な作りだと思います。けれどあまり詳しく言葉で描写すると物語の展開のスピード感がそがれ、臨場感を味わうことができないため、あえて割愛しているのでしょう。けれどどんなに割愛しても漫画のスピード感には到底届きません。漫画という表現を選んで作られた世界は文章で表現するとどうしても物足りない部分ができると感じます。漫画とアニメ以上に互換性が悪いと感じました。ノベルズ版より漫画を読んだ方がおもしろさが堪能できると思います。

 そうは言ってもノベルズ版から読書するようになるのではないかという期待が捨て切れないかもしれません。補助輪付きの自転車としてノベルズ版を捉える向きもあると思います。加えて本人の興味が読書のきっかけになることも多いので読書の入り口と考えたくなるのだと思います。

 けれどノベルズ版は読書のトレーニングにはならないと思います。まっさらなところから言葉が設定を決めていき、それを受け取りながら物事が展開していくのを追うことが読書です。知っていることを前提とした作りのノベルズ版では言葉から受け取ることが不十分でも物語について行けてしまいます。これでは読書につながらず、次に読む本もノベルズ版になる可能性が高いと思います。本という商業ベースから切り離せないものを扱う以上、図書館は本をよく観察することで、必要なものを見極めていくことが大事です。