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定点観測

 子どもと、読書という一点で関わっていることは、定点観測のようだと感じています。毎年相手が変わっても同じ年齢の子どもと付き合うのでつい変化に敏感になります。けれど子どもが変わってきているというのは、実はいつの時代も言われているように思うのです。一般的におとなが子どもを見る時、自分の子ども時代と比べることが多いと感じています。すると少なく見積もっても10年、人によっては半世紀前のことを持ち出していることになります。こう考えると変わるのは当たり前なのだと思います。まず子どもは環境の影響を大きく受けます。育った時期が10年以上違えば生活環境が変わっていきます。例えばオール電化が進み、家庭で火を見たことがない子どもが出てきています。家族のあり方も働き方の変化により三世代同居から核家族や単身赴任家庭などありようが変わってきました。そしてこれからも夫婦別姓や同性の両親といった個人の選択が尊重され様々な家族の形が増えていき、子どもたちも変化していくのだと思います。

 でも私たちは本という時代の変化をものともせずに支持されてきたもので子どもたちに関わっています。活版印刷術の発明から600年弱、それ以前にも本があったことを考えると子どもが変わってきているという私たちの感覚は些末なことだと思います。少なくとも私たちが関わっている子どもたちが生きていく中で、活字を使用しなくなることはまず起きないと思います。読むことは生きる上で重要だと考えるからこそ子ども読書推進が図られているのです。目先のことに囚われず、どっしり構えて子どもと関わることで定点観測が成り立つような気がします。私たちが見るべきところは、子どもが読みたいという気持ちを持っていることと、物語に心惹かれるという本質だと考えています。そこをきちんと見ていくことが同じ年齢の子どもたちとずっと付き合う意義だと考えています。