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待つこと

 図書館は読みたい本がすぐ手に入る便利な場所という部分だけが一人歩きしている感じがします。けれど読みたい本が決まっているなら、例えその図書館になくとも追いかけることができ、読むことができるということはあまり知られていない気がします。その本でなければ解決しないという利用者の強い要望に応える仕組みなのです。これは利用者主体の図書館ならではの仕組みだと考えています。こう考えるとスピード重視ですぐ手に入らなければ読みたくなくなる本は利用者にそれほど必要とされていなかったと図書館が判断しても良いのではないかと思います。これは予約が集中する本に関しても同じかと思います。予約が集中すると待ち時間が長くなるのは避けようのない事実です。そうでなくとも出版界から図書館が売上にブレーキをかけているのではと疑われることもあるのです。複本の数を増やして待ち時間の軽減を図ることが本当に図書館サービスの向上につながるのか考える必要があると思っています。

 図書館で読みたい本を読むことに提供できる速さを絡めると図書館の本質からずれてしまう部分があると感じています。最初から読みたい本が決まっている場合は状況によってはすぐに手に取ることができず待つことになり、すぐ手に取ることを優先させるなら棚にある本から選ぶことが図書館を使うということなのだと思います。待たせることが当たり前と開き直りたいのではなく、図書館の特性を生かそうとすると待つことが含まれてしまうことが知られていないことに問題があるのだと思います。図書館である以上、公共の共有の財産です。ちょっと立ち止まって自分の本棚ではないことに思い至る余裕を利用者が持っていけると図書館が活きると思います。