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開架式

 新しい市役所を見て、開架式の図書館が思い浮かびました。開架は図書館用語で利用者が手に取れる形で配架してあることを指します。反対に閉架は書庫に保存し利用者の求めに応じて取り出す形のことを指します。職員の方が見えるところに勢揃いしている感じが開架の図書館のイメージにつながったのです。来庁する市民の用事の内容によって担当職員は変わるのだと思いますが、利用頻度の高い内容の担当者だけでなく、すべての職員が待機している様はまるで全開架の図書館だと感じました。

 開架率が高く閉架書庫などない方が図書館サービスの向上につながるのか、閉架書庫と併用した方がサービスの向上につながるのかは一概には言えません。蔵書数や立地条件など様々な要因が絡む問題だからです。けれどジャンルは違いますが市民サービスの向上を目指す市役所の作りが全開架の方向に進んでいることは興味深く、図書館だけ見ていては見えないことが見える気がします。

 市役所での全開架状態の、1番のメリットはスピードだと感じました。要求に的確に適材な人が最短時間で対応できるシステムだろうと思います。そのために来庁者は自分でどの部署に行く必要があるのかを判断する必要があります。職員を介することを最小限に抑えて効率化を図っていると感じました。手間を省くことでスピードを上げようという工夫なのかなと思います。

 そして図書館でも全開架のメリットとしてスピードは挙げられます。すべて直接自分で手に取れるので職員に頼んで持ってきてもらう手間が省けますし、中を確認してから手に取ることができます。また図書館の場合、目的が決まっている人ばかりが利用する場ではないので書架を眺めながら選べることが支持されます。

 スピード重視だと、どうしても人が介することが減ります。しかし手続きにしろ本を選ぶことにしろ、人に関わってもらった方が納得できることや満足感が得られる場合があります。反面、人との関わり方が希薄になってきていて、個人個人で人との距離感が違います。そのため知らない人に関わることが難しくなってきています。そして市役所や図書館は不特定多数の知らない人が来るところなので、できるだけ人と接しない形がトラブルに巻き込まれない方法という消極的な選択になるのも止むを得ない状況ではあります。それでも人と関わることを減らす方向で考えて欲しくないと思います。人が関わることが贅沢な選択になってきているようで違和感を感じています。