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住みながらリフォームする

 どんなことをするにせよ新しく一から始めることは、更地に建物を建てていくようなものだと思います。建物の形や大きさも選べ発想のままに自在に形を作っていくことができる印象です。新しく生み出すことは注目されやすいですし達成感を得やすいと思います。けれど図書館のように既に形が決まっていて利用されているものは、現在の形を保持しながら修正をかける形でしか発想が活かせません。下手に手を加えると今あるものが崩壊する危険が伴うからです。そして崩壊してしまっては今いる利用者を置き去りにしてしまいます。そのため一から始めるのとは違った労力が必要ですが、変化が目に見えにくく張り合いを感じにくいものです。

 ただこの達成感や張り合いという感覚が曲者だと感じています。利用者の満足度を上げるために時代の風を入れ新しいことを取り入れながら、図書館が変化していく必要はあると考えています。けれど図書館は一から作り直さなければならないようなものではないと思います。達成感に囚われすぎて目に見えることを目標にすると、今あるものを否定し一から作り直す方向に舵を切ってしまいかねません。

 図書館が求められているのは、住居に住み続けながらリフォームするような変化なのだと思います。使いながら補強したり修繕したりすることは労力の割に変化が伝わりません。けれどこれを続けてきたからこそ、私たちは図書館のある生活を享受できているのだと思います。そして私たちがリフォームし続けることは次の世代が図書館のある生活を受け取ることにつながるのだと思います。