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語彙が少ない

 先日小学校の先生とお話ししていて、今の子どもは「語彙が少ない」という話になりました。「語彙が少ない」ということ自体は読書の必要性が取り上げられる際によく聞く問題点です。けれど先生の分析は子どもたちが攻撃的な言葉を使う理由は語彙が少ないためではないかというもので、とても新鮮に感じました。

 今の子どもたちは級友から不快なことを言われたら最初から「うっせぇ」とか「死ね」などと返してしまいます。本来なら揉めに揉めても使うのを躊躇するはずなのに真っ先にそういう言葉が出るのは語彙が少ないからというご意見でした。確かに「聞きたくない」とか「そんなこと言われたら悲しい」といった言い方で間に合う感じですし、悪態がつきたいにしても違う言い方がたくさんあります。そう考えてみると自分の子ども時代、悪態にもバリエーションがあったことを思い出しました。そしてその手の悪態は使ったことがなくても耳にする機会は結構あったような気がします。今思い返すと大真面目に「お前の母ちゃんでべそ」なんていう悪態をつく様は、ユーモラスでさえあります。

 けれどこれらの語彙は生活していく上での語彙です。読書で培う語彙とは分けて考える必要があると感じます。生活していく上での語彙の少なさは、よく言われることですが「遊びが足りない」ことが原因だと思います。それも群れて遊ぶことが決定的に足りないために起こっている気がします。言葉は、使ってみて初めて使うにふさわしい時や場所を知ることができ、言葉の影響を実感できるのだと改めて思いました。読書以前に生活していく上での「語彙が少ない」ことは日本語を使いこなせないことに繋がる怖さを感じました。