· 

絵本をプレゼントする

 自治体が赤ちゃんに絵本をプレゼントするファーストブックと言われる事業は多くの自治体が取り組んでいます。親子で絵本を楽しむことは、親子の絆を深め、言葉を育てるだけでなく子どもの成長を促し、そして読書推進にもなるという良いことづくめの企画で広く支持されたからです。そしてファーストブックが浸透すると次にセカンドブック、サードブックと年齢を上げた段階の子どもたちにも絵本をプレゼントする自治体がで出てきました。上田市も県下の他市町村と歩みを揃えていく形でファーストブックとセカンドブックが行われています。

 けれどセカンドブックが始まってみると、ファーストブックが何を担っているのかが際立ち、セカンドブックにファーストブックと同じ役割を持たせるのは難しいと感じています。

 ファーストブックの肝の部分は絵本をプレゼントする時期にあるのだと思います。大事なのは赤ちゃんと一緒の生活を始めたばかりの親御さんにプレゼントすることです。その時期のパパやママは赤ちゃんならではの意思表示を理解することに追われ何もかも手探り状態です。そんな中で赤ちゃんと暮らさなければ出会わない道具を取り入れてその使い方を覚え使い心地を覚えていきます。例えば抱っこ紐やスタイなどは赤ちゃんと暮らさなければその必要性などわからないものです。そしてそのタイミングで絵本が赤ちゃんと楽しむものとしてプレゼントされるからこそファーストブックが活きるのだと思います。プレゼントすること自体が赤ちゃんの生活に欠かせないものという強いメッセージになるからです。そして絵本を楽しんできた人も楽しんでこなかった人も今度は親子で楽しむものとして新しく出会い直しているのです。ファーストブックはプレゼントすることとタイミングが噛み合って成り立つものだと考えられます。

 だとすればファーストブックのようなタイミングをもう一度作るのは難しいと思います。年齢を重ねるほど親子で絵本を楽しんだ経験値に差が出てきます。例えば小学校入学とか節目はあっても、ファーストブックの時のように全員で一から始められる訳ではなく、それぞれの経験値を抜きにして出会い直すことができないからです。そしてプレゼントされて嬉しい本は年齢を重ねるほど多種多様になりプレゼントすること自体が難しくなります。やはりセカンドブック以降はファーストブックとは同列に考えない方がいいのではないかと思います。