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いつでもどこでも

 学校でタブレットが1人一台使えるようになると、電子書籍の導入についての検討が行われると思います。タブレットの活用方法が限定的に行われているうちは、さほど議論にならないかもしれませんが、タブレットを常に持ち歩く状況になると必ず問題になると感じています。教科書も紙版と電子版の併用というところまできているので、紙版と電子版の扱いの検討は一般書籍にも及ぶと思います。どちらにも生産流通に関わる業界があるので、どちらかを選ぶという極端な選択は起こらないとは思いますが、状況に合わせて読書をしていくための環境を整えていく必要があります。

 電子版を評価する人たちがよく使う言葉に電子版の利便性があります。タブレットさえ持っていれば、いつでもどこでも好きな本が読めるというものです。ネット環境や電子書籍へのアクセスの保証などの物理的環境がクリアされたとしても、この「いつでもどこでも」というフレーズは子どもの読書に関しては疑問が残ります。読書をする習慣がある子は電子版でなくとも読むことを生活に取り入れているからです。「いつでもどこでも」は一見読書を推進するようで推進する言葉ではないと思います。読みたい本が読みたい時にあったら読書するというのは、読まない人の言い訳ではないかと感じています。実際読書好きなら思い当たる節があると思いますが、やらなければならないことがある時ほど読んでしまうことがあります。ましてぽっかり時間が空いたから読書しようと思う人は、すでに読書家で今の環境でも読みたい本が確保できていると思います。

 そして選択肢が多いというのは、読むことが習慣になっていてたくさん読みたいと思っていてこそ活きる環境です。積極的に読みたいと思っていない人にとっては選択肢の多さがかえって負担になることもあります。

 「いつでもどこでも」が歓迎するのは、読書が習慣になっている人たちなのだと思います。そのため「いつでもどこでも」が子ども読書推進における電子版の優位性の理由にはならないと考えています。