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新刊に拘らなくても

 図書館の選書について考えていくと、どうしても本の出版の仕組みに向き合うことになります。蔵書に入れたくても、絶版や品切れでは購入できないため、新刊から本を選ぶしかなく図書館は膨大な新刊と常に向き合ってきました。極端に言えば欲しい本を探すのではなく新刊として提示された本から見繕うことが選書になっているともいえます。乱暴な捉え方をすると、日本の出版の仕組みでは、新刊を出さないと資金繰りが難しくなるため出版社は経営のために新刊を出し続けます。出版点数が増えるのも出版事情が豊かになったというより出版の仕組みに影響されているのではないかと推測しています。そのため図書館で選書する際の選択肢が増えているにもかかわらず実は本当に欲しい本が少ないというジレンマが生まれていると感じています。

 この問題はコンテストなどの賞の問題と似ていると思います。例えばアメリカにコールデコット賞というのがあります。アメリカ児童図書館協会がアメリカでその年に出版された最も優れた子ども向けの絵本に毎年授与している賞です。受賞した絵本には特徴的なシールが貼られ、時代を超えて支持される作品が多いので見たことがある人も多いと思います。ここで注目したいのが「その年に出版された最も優れた」という点です。作家別に作品をまとめてみた時、受賞作に違和感が出ることがあります。この作家ならこの作品という絵本が受賞していなかったり、どうしてこの絵本が受賞しているのだろうと感じることもあります。これらの問題は同年に他にどんな絵本が出版され何が受賞したのかを見ると納得できます。言葉は悪いですが、絵本にも豊作の年と不作の年があるのです。

 同じ様に図書館が選書している新刊にもこの豊作と不作という視点を入れてもいいのではないかと思っています。まずは新刊ありきではなく欲しい本を探すことも蔵書が充実することなのだと思います。特に図書館の蔵書としての子どもの本は読み捨てていく本の比重を高くしていく必要はないと考えています。言い換えると新刊に拘らない方が蔵書としてパランスが取れると思います。不作だと感じた時は既に持っている本を買い換えるチャンスと捉えていけるといいのではないかと思います。