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笑顔

 目が笑っていないという表現がありますが、マスクで口元の表情が見えないままで人と会っていると、口元が語っている部分も大きかったのだと感じています。

 先日、初対面の方にご挨拶する機会がありました。マスク着用だとどうしても言葉がくぐもるので名札を掲げて自己紹介してくださるなど、穏やかで人を大切にする、感じの良い方だという第一印象でした。満面の笑みを浮かべていらっしゃるであろうということは目元の雰囲気と声の感じで伝わっていましたが、口元が見えないので作り物の笑顔のような印象を持ってしまいました。マスクさえしていなければ、笑顔がより好印象を深めたであろう場面にもかかわらず、笑顔の真意を疑う感じを持った自分に驚きました。

 こんなふうに笑顔がストレートに伝わらないのは、口元が見えないというのが一番の原因だと思いますが、もう1つ思い当たることがありました。それは今回お会いした方が人と接するときにマスクを考慮しての対応をされているという点です。初対面の方なので普段の話し方を知りませんが、一言一言区切るように丁寧に話していらっしゃいましたし、名札を使った自己紹介も自然でした。ですから笑顔も口元が見えない分、意図的に笑みを深めていらっしゃるのではないかと想像しました。意図した分に不自然さを感じたのだとすると辻褄が合います。ぱあっと花が咲いたような満面の笑みは顔全体でしか表現できないもので、マスクをしている限り表情で伝えることは難しいのだと思いました。