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帯の難しさ

 ブレイディみかこさんの『ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー』を読みました。とても話題になり黄色の目立つ装丁で本屋さんに平積みにされていたので、すでに読んだ方も多いのではないかと思いますが、私は読んでいませんでした。

 この本はイギリス在住の筆者の視点で中学に入学した息子さんの中学校生活が描かれています。本屋大賞を取った記憶があったので小説だと思い込んでいましたが、ノンフィクションでした。なんの気負いもなく等身大の生活が書かれているのですが、生活するということは自分と向き合うこと、時事問題は自分と社会の関係だということが、サラッと伝わってきます。重たい問題が満載なのですが、社会の歪みや問題点を声高に論うのではなく、生活に落とし込んで受け止めていることに作者の知性を感じました。社会問題の本としても親子関係の本、教育の本としても読め、なぜたくさんの人に支持されたのかを読んで納得しました。

 内容は大満足だったのですが今回読んでみて気になったのは、帯でした。幅が広く印象的な黄色の表紙と一体化する黄色と目に鮮やかな青の帯です。表紙の側に高橋源一郎、三浦しをん、西加奈子、中川梨枝子、永作博美という絶妙に人選された人たちの一言と共に「読んだら誰かと話したくなる一生モノの課題図書」と青地に黄色の太文字で書かれています。裏には内容説明と本文から抜粋した言葉が踊るようなレイアウトで書かれています。読み終わってから見ると課題図書とは言い得て妙なフレーズだと思います。そして抜き書きされている言葉は印象に残った言葉でもありました。けれどこの本を読む前にこの帯を読んだら、読みたくなったかといえば多分読まなかったと思うのです。実際今回私は本屋さんでブレイディさんの新刊をおもしろいと勧められ、「ぼくは黄色で〜」を読んでいないなぁと思ったのがきっかけで読みました。

 帯を作るというのは、図書委員会などの活動で取り上げられ、作り手に好まれている印象があります。けれど本は相手を特定できた方がお勧めしやすいし、お勧めの言葉も選びやすいのだと思います。不特定多数の人に向けた帯というのは意外と難しい物だと感じました。