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人を介して

 図書館へ行くと、新刊コーナーをチェックするという人は多いと思います。おとなだと話題になっている本などの情報を持っているので、それと照らし合わせながら本を手にとったりします。私たちは今、新聞やテレビの情報番組、ネットの書評サイトなど、新刊に関する話題には事欠きません。私たちは自分が思う以上に新刊を追いかけるサイクルに組み込まれています。話題になる本には、新鮮味だったり時代を写したテーマが盛り込まれていたりして、多くの人に支持される要素が含まれていると思います。新刊の良さや味わいを否定するつもりはありません。けれど新刊を追いかけることだけに注力するのはもったいないと思います。

 なぜなら話題になっている本というのは、顔の見えないたくさんの人が支持している本ですが、話題になっていなくても顔の見える人が支持している本の魅力というのも捨てがたいと感じているからです。本は数多く読んでいくと自然と自分の中でおもしろさを判定している部分があります。その人の中のランキングとでも言えばいいでしょうか。人に披露する物ではないので意識することは少ないかもしれませんが、その表れの一つが読んだことがある本を買いたいとか手元におきたいという気持ちだと思います。これには自分の感覚しか反映しないので、他の人には出せない特色が出ます。顔が見える人の支持した本に出会うことは、本だけでなくその人の感覚とも出会うことになります。本の魅力と人の魅力の相乗効果が感じられることが人を介して本に出会うおもしろさだと思います。もちろんそれが自分にとって必ずおもしろいと思う本ではないかもしれませんが、意外な本に出会える貴重な機会になります。

 今読書は一方通行すぎると感じています。読むという入り口だけで、読んだ本について話すという出口がない感じがします。そして出口を作ると、自分の中の本に対する判定がくっきりしていくと思います。内容を誰かと分かち合いたい本とそうでもない本というのがはっきりするからです。読書は読む人と切り離せない物です。けれどこっそり独り占めしたい物でもないと思います。人を介して出会う機会を大事にしたいと考えています。