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変わること

 「本はともだち」事業を始めてから20年が過ぎ、30年が近くなって来ました。こうなってくると「本はともだち」でご一緒した先生が「本はともだち」を受け入れる学校の校長先生や教頭先生になられていて再度お会いすることがあります。また「本はともだち」を一緒に作ってくれた子どもたちが小学校の先生や図書館の職員となり「本はともだち」を支える人として再会することもあります。そして当時を振り返って「本はともだち」の感想や印象を聞かせてもらったりすると、「本はともだち」も同じことをしているようで、少しずつ変化していることに気がつきます。

 先日も以前「本はともだち」を取り入れた先生に、机を下げて前のほうにみんなでキュッと固まって聞いて楽しかったという感想をいただきました。現在は状況が許さないので、この座り方はできませんが、これも魅力だったのだと改めて思いました。また別の先生からは「本はともだち」をやっているときはすごく大変だったけれど、子どもたちに読む力がついたという言葉をもらいました。クラス全員紹介された本を全冊読むというのは、担任の先生にとってプレッシャーだったのだと思います。そして紹介した本には共通のテーマがあるので、読んで探してみてというのも、かなり苦戦したけれど子どもたちの読解力につながったとおっしゃっていました。このような話を聞かせてもらうことは私にとってとても嬉しいものである反面、自分が変わってきていることを自覚させられる機会でもあります。

 本の紹介は、紹介することが大事なのではなく子どもが読むことが大事です。そのために、子どもたちの状況を見ながら、細かく対応していくことが大事だと思ってやってきました。その結果、私のやり方も少しづつ子どもの変化とともに変わってきています。基本のところは変わらないので普段は自覚していないですが、以前と比較するとやはり変わってきています。変わってきている事実は少しの寂しさと戸惑いを連れてきます。けれど今目の前の子どもたちが張り切って読んでくれるための変化と捉えると残念なことではないと思います。それでも変わることに慎重になる姿勢は必要だと考えています。目的が「楽しんで本を読むこと」ではなく「喜ぶこと」や「楽しい時間を過ごすこと」にすり替わりかねないからです。ただ変わることについて考えすぎると気持ちのコントロールが難しくなるようなものだと最近感じています。大事なのは目指すものを見失わずに、今の最適を探ることです。やり方が変わったと自覚した今は刻々と過去になっていきます。今の積み重ねに集中したいと思いました。