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言葉の習得

 子ども読書推進の基盤となるのは、生活に根ざした言葉の習得だと考えています。それは難しいことではなく、自分の周りのものは全て言葉で表すことができ、自分と他者を言葉を使うことで分けることができ、自分の思いを言葉で伝え、他者の思いを言葉で受け取ることができることだと思います。もちろんこの能力は年齢を重ねると共に進化し、より巧みに使えるようになっていくものですが、言葉を使うことが習慣化していないと読書につながらないと感じています。

 あまりにも当たり前のことで、そんなことができない子がいるのかと思う人もいるかと思います。けれど小学生と付き合っていると言葉の習熟の未熟さが原因と思われる問題行動に出会うことがままあります。今の子どもたちは年々幼くなってきていると一括りに言われていますが、この幼さの原因の多くが言葉をうまく使えないことにあるのではないかと推測しています。例えば感情がコントールできずに癇癪を起こす、相手の意図が受け取れずに噛み合わないやりとりになるなど、幼児だったら日常風景ですが小学生がやるのでおとなが戸惑うのだと考えています。幼児期に戻ってやり直すわけにはいきませんから、足りない分を今どう補っていくかが重要です。そのためにまず、日本で生まれ育っているにもかかわらず日本語がうまく使えない子が出てきている事実から目を背けないことから始めるしかないと考えています。

 けれどどうすればいいのか私も明確な答えを持っている訳ではありません。ただヒントになるのがアメリカの読書教育ではないかと考えています。アメリカは移民の歴史が長いので、アメリカ人であることと英語が使えることが同列に捉えられています。そのため移民への英語教育に長年熱心に取り組んできた歴史があります。その中には英語が母語ではない子どもたちへの学校教育が含まれていて、その方法論が確立しています。そして教材といっても差し支えないような言葉を教える絵本も多数出版されています。これからは言葉の習得ということを視野に入れて考えていかなければならないのだと思います。