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どこへ行こうとしているのだろう

 天井まで壁一面に表紙を見せて絵本が並べられ広く美しい木製の階段や空間を渡れる金属製の階段が配置され、見ただけで心惹かれる子どもを対象とした図書施設のHPを見ました。建築家の安藤忠雄さんが設計し、大阪市に寄贈した図書施設「こども本の森 中之島」です。この施設は中之島公園内に位置し建物内部全てが子供のための閲覧室という作りです。気になる本が見つかったら、どこでも好きな場所で読み進めて構わないをモットーに建物を中心とする中之島一帯が自由に読書を楽しめる「本の森」だと謳われています。鉄筋コンクリート造 3階建で延床面積が約800平方メートルということですので、子どもに特化したこともあり図書施設としてはこじんまりした印象です。2020年7月開館だったためか、完全予約制の施設です。事前予約なしには入館できないというのは図書館じゃない感じがします。そしてどうも図書館ではないらしいのです。

 この「こども本の森 中之島」は図書館法に則って運営しないため、建物を寄贈された大阪市はこの建物を図書館ではなく文学を中心とした良質で多様な芸術文化等に触れる機会を提供する文化施設と定義づけています。そのため所管は教育委員会ではなく首長部局となっています。そして特徴的なのは寄付で運営を賄おうとしている点です。そのため寄付を全面に押し出し寄付してもらえる様な施設を目指している印象です。大阪市のHPには寄付をした企業や許諾が取れた個人名の一覧があり、集まった寄付の総額が公表されています。寄付の金額によって銘板での公表や褒章制度に該当する等の説明まであります。加えて寄付に絡めて企業が営利目的で関わることも可能になっています。現在この施設は指定管理者制度で運営されていますが、指定管理者制度の危うさの本質を見た思いです。指定管理する側の設定によっては図書館であろうとしたものが図書館ではないものになることもあるのです。安藤忠雄さんの理念と建物が素晴らしいだけに、なんとも後味が悪い感じでした。そしてこの「こども本の森」は遠野市、神戸市と次々と計画され順次開館する予定です。そしてどちらも同じ様に寄付を募っています。このプロジェクトがどうなっていくのか今後も見ていきたいと思います。