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目立たないこと

 子どもに関わる活動は、話題になりやすいと感じています。今までにない新しい取り組みに光があたりやすく評価が集まる傾向があります。子どもは未来を作るので、次世代に何か残したいという人間の本能と未来への期待は普遍的なもので多くの人に共感されやすいからだと感じています。

 この感覚は学校教育にも影響を及ぼしていると感じています。社会が抱える様々な問題を学校教育で解決したいと考えるおとなは、意外に多いのではないかと思います。様々な価値観が入り混じっている現在、自己責任の名の下、集団での意思決定は難しく合意を得ることも困難です。合意は個人の希望を必ずしも通すわけではないからです。そして問題が起こったときに意思決定機関として存在している議会等にかけて解決できることばかりではありません。生活していく上で個人の責任だけでは決めかねる問題というのが思いの外起こるものです。そして問題に直面すると意外とたくさんの人が関わっていることで生活が成り立っていることに気がつきます。ですから学校で教科以外のことを取り上げて欲しいと考えるおとなが増えるのだと思います。

 そして子どもたちが集団生活をしているために、社会の一員として守って欲しいことなど広めたいことを伝える場として学校が最適だと思われるのだと思います。けれど子どもたちの時間にも限りがあります。取り上げることを増やせば増やすほど、内容が薄くなり学んだことを定着させるための時間を取ることができなくなります。そして成長過程の子どもは食事や睡眠などの体を維持するための時間を削るわけにはいきません。今までやってきたことで実は子どもの時間はいっぱいで何かをやめない限り新しいことを取り入れる余地はないのだと思います。

 新しい取り組みは目立ちます。子どもの未来をより広げ子どもたちにもおとなにも魅力的なことだと感じさせます。けれど子どもの成長に必要なのは、毎日繰り返すことで身につくような地味で目立たないことだと思います。そういう意味で子どもの読書は目立たないことだと感じています。地味で目立ちませんが、奇をてらわずに辛抱強く取り組むことで子どもたちの力になっていくのだ思います。