· 

ピントが合う

 私は、おはなしざしきわらしの会というストーリーテリングや読み聞かせをするボランティアグループを主宰しています。この会では3つのグループに分けて勉強会を毎月1回のペースでしています。ストーリーテリングや読み聞かせを実際にしながら、物語の伝わり方を確かめるためです。そして聞くことで伝わり難い原因が読み手にあるのか物語や絵本の構造にあるのかを見極めています。

 私たちはストリーテリングや読み聞かせを基本子どもたちに向けて行っています。けれど1カ所だけ重複の重度障害者の方を受け入れているディサービス施設での読み聞かせをお引き受けしています。ここの施設を利用されている方は18歳以上の方で自力で体を保持することが難しい方もいらっしゃいますし、視力聴力なども正確なところはわからない方ばかりです。話せない方も多いため私たちには直接の意思疎通が難しく、職員の方たちに利用者の方たちのお好みや反応を伺いながら絵本の読み聞かせをしています。そのためその施設で使う絵本は、普段私たちがよく使っているものではありません。おとなに聞いてもらうためあまり子どもっぽい感じの絵本は使えないからです。かと言って物語を受け取るという形では聞いてもらえないので、選択に苦慮します。

 けれど、目的を持って図書館の書架を眺めていると、この条件に合うのではないかという絵本が見えてきます。普段目に入らないものが見えてくる感じでピントが合ったという印象です。図書館という選択肢の多いところで見つけるおもしろさはこういうところにあると感じています。本屋さんや自分の本では到底このような選び方はできません。図書館の本は、欲しい本がすぐ見つからなくて面倒だという声を聞くこともありますが、この埋もれている感じが本当は魅力だと思います。自分だけの宝探しをする場所と考えるとワクワクします。求めている本が利用者の数だけあり、それに応える施設でもあるという図書館の特性をもっと広く知ってもらえるといいなぁと思います。