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育ちに心を寄せる

 教育指導要領はほぼ10年毎に見直され、教育が目指す子ども像はその都度微妙に変わってきました。教育指導要領に沿って子どもたちを教え導くことを求められる先生方は、関わっている子どもたちの現状と示された指針のギャップを洗い出し埋めていく作業をする人なのだと、第三者として見ていると感じます。そして指導要領が変わったことはニュースとして話題になりますが、学校関係者以外はさほど重要視することはなく注目し続けることもあまりないと感じています。けれど教育指導要領は社会の一員となった子どもたちに影響を与えていると思います。

 おはなし の会や「本はともだち」事業で長年子どもたちと関わってきた中で教育指導要領は世代の特色を作ると感じています。学校教育に携わっている先生方は子どもたちの現状に注目する仕事ということもあり、子どもたちがおとなになった姿をイメージすることはあまりないのではないかと想像しています。また多様性を尊重し子どもの主体性をいかに引き出すかという現況指針と先の見通せない今の時代は先生だけでなく誰もが子どもの将来像を想像しにくいと思います。それでも指導要領に沿った学校教育で一定程度の世代の特色が形成されると感じます。

 例えばいわゆる「ゆとり世代」と呼ばれる世代は競争心が低く合理的でストレスの耐性が低いといわれています。それ以前の詰め込み教育の反省から週休2日が導入され生きる力の育成を掲げ大きく教育方針の転換が図られた教育指導要領に沿って学んだ世代です。そしてマイナス面が取り沙汰されますが「ゆとり世代」の特色は見方を変えると自分を守る力が強いともいえます。教育指導要領が求めたものとは微妙にずれている感もありますが、これもある意味生きる力ではないかと思えます。

 子どもたちは育つ環境に影響を受けるので、社会情勢に合わせてまた子どもの抱える問題に対応して教育指導要領は変化していくものです。時代と連動してして作られている以上時代の特色を反映し子どもたちにその世代としての特色をつけるものだと思います。ですから学校教育と関わっていない人も教育指導要領の内容に注目した方がいいと思います。それは齟齬を見つけることではなくこどもたちの未来像を想像することです。子どもたちがどんなおとなになるのだろうと関心を寄せることは社会の未来を信じることにつながると思うからです。