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読む以前の問題

 上田市では小学校1年生の読みのつまずきをサポートするためにMIMという授業を取り入れています。平仮名での表記が発音とずれる場合があることや伸びた音の表記が複数ある点、促音などの扱いに注目して、カードを見せたり体を使ったりしながらスムーズに読めることを目指す授業です。多層指導モデルと言われ、子どものつまづきを明らかにし異なる学力層の子どもたちのニーズに対応した指導を目的にしています。例えば「時計」は発音する際には「とけえ」に近い発音をしますが表記するときは「とけい」になります。「お父さん」は「おとおさん」と発音しますが「おとうさん」になり、促音が入るだけで同じ文字の並びで別のものになる「ねっこ」と「ねこ」といった表記の特色を文章の中ではなく言葉を取り出し比べたりしながら学んでいきます。そして単語自体を知らなくともその言葉を表す絵カードを使うことで単語も合わせて覚えていけるというものです。もちろんこういったサポートが必要ない子どももいますので、重点的にサポートが必要な子どもを把握し手厚いサポート体制を取るための授業でもあるのだそうです。 

 この授業内容を聞いた時に外国語の習得のようだという印象を受けました。母語以外の言語を日常会話から覚えた人が読み書きを覚える時のやり方に近い感じがしたのです。MIMでは異なる学力層と言っていますが、言葉の習得が十分でない段階で学齢期を迎えている子どもが増えているということだと思います。そして学校教育での学びは、ほぼ同じことができるという前提があってこそ集団で学べてきたため、集団になってから言葉の習得の度合いを揃えるために編み出されたのがMIMなのではないかと思います。

 ただこのような取り組みが必要だということは、私たちは言葉の習得は放っておいても身につくものだと思い込み過ぎているのかもしれないと思いました。人が手厚く関わることで言葉が育ちます。相互のやりとりがあってこその言葉です。それは家庭で行うことだとか絵本をたっぷり読み聞かせていないからとか原因を探っても簡単には解決しない問題だと考えています。そして子どもたちが言葉を使って人とやりとりしたり言葉で遊ぶことが減っているのだと感じています。まずは役割分担をしすぎず、それぞれがそれぞれの立場で言葉を使うことを意識しながら多層的に関わることが重要だと思います。