· 

公共図書館って?

 公共図書館が公共図書館であるための条件はなんだろうと改めて考えることが増えています。戦後、図書館法が制定され次々と公共図書館が開館しました。市町村単位で公共図書館を持つことは特別なことではなくなり、市町村規模によっては複数の図書館を持つことが贅沢だと考える人はいなくなっています。けれど税収の減少といった財政面の問題が国をはじめとする市町村を苦しめるようになり公共図書館の様相も変わってきています。公共図書館を増やすことや図書館自体ができることを増やすことで活路を見出してきた図書館運営が財政上の問題で方向転換を迫られていると感じています。

 公共図書館は他の箱物と違って建設以降も図書館を形作るための財源が必要です。そのため図書館の維持管理にかかる費用を圧縮しようと様々な工夫が凝らされてきています。その代表的なものが管理委託です。図書館の管理運営を委託することで図書館にかかる経費を削減しようとしています。そして主に人件費の圧縮と考えられていますが、行政の支出の費目の変換という効果が大きのではないかと考えています。国が公務員数を減らすことを市町村に迫っているのでその対策の一つになっている部分もあると思います。また図書購入費の圧縮のために寄贈本で図書館を作るといった荒技に出る公共図書館も出てきました。逆に図書館法に則った運営を良しとせず、大阪市の「こどもの本の森中之島」のように一見図書館に見えるけれど図書館じゃないという施設もできてきています。

 新しい取り組みの問題点を見つけることは簡単です。けれど大事なのは問題点を洗い出すことではないと考えています。財源の減少が食い止められるという保証がない限り今まで通りの形では公共図書館の運営が難しいからです。『ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー』でイギリスの厳しい緊縮財政の先に起こったことが取り上げられています。公共図書館がまさかの閉鎖に追い込まれ住んでいる地区に図書館がなくなってしまったというのは対岸の火事ではないと思います。そしてニューヨーク公共図書館はニューヨーク市から受け取る税収からの財源以外に寄付などで必要な財源を確保していることが、あの多岐にわたる事業内容が展開できる理由だったりします。私たちは今まで公共図書館は公共が運営するものなので、足りないことを要求し行政になんとかして貰えばいいと考えてきました。けれど公共図書館に何を求め公共図書館をどうしていくのかを市民が財源を含めて多角的に考える時期がきていると感じています。