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あおい目のこねこ

 日本での初版が1965年の『あおい目のこねこ』エゴン・マチーセン/文・絵 福音館書店 は長く読み継がれている作品です。自分で読むようになった子どもたちにぴったりな作りだと考えています。作りとしては幼年童話といわれる読み物に分類するか、絵本に分類するか悩ましい作品で、子ども時代に親に読んでもらったという人も多いのではないかと思います。本のサイズが絵本としては小ぶりで本の厚さがありますが、白地のページに色を押さえて主人公の青い目が印象に残る絵が描かれ、ページ数があるため絵と文章が一致していて絵読みができます。見開きに一つの絵という漫画のコマのような作りなので物語がサクサク進むのです。そして1の巻2の巻と章立てしてあり読み手の物語への期待が自然と高まる作りです。ねずみの国を見つけたらお腹をすかせることはないと考えた主人公がねずみの国を見つけに行くのですが、思いがけないことの連続で物語に引き込まれます。そして主人公は可愛らしくもかわいそうにも描かれずに起こったことに対処していき視覚的に訴えるわかりやすい絵が物語の展開を盛り上げます。そして「はえいっぴきでも食べないよりはましでした」と説明されている状況でも「なーにこんなことなんでもないや」と前を向くこねこに読み手は次を期待するのです。この作品は読み始めの子どもたちに必要な条件を揃えています。何しろ読みやすくておもしろいのです。読み始めの子どもたちは自分が読める本の内容に満足していない場合があります。自分で楽に読める本は内容的に満足できず、おもしろい本は読むのが難しいとジレンマを抱えていることが多いと考えています。『あおい目のこねこ』はこのジレンマを解消する作品だと思います。大事なのは子どもたちが物語の展開自体を楽しんでいることです。おとなはうっかり主人公の前向きな姿勢やひょうひょうとした対処に惹かれ、こねこの考え方に学ぶところがあると考えたりします。これはおとなならではの楽しみ方でこの作品の魅力の一つですが、子どもにとって重要な点ではないことを子どもの本を選ぶ時には忘れてはいけないと考えています。