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きょうはなんのひ?

 思いつくままに読み始めの子どもたちによく紹介している本をあげていますが、『きょうはなんのひ?』瀬田貞二/作 林明子/絵 福音館書店もよく紹介する本です。

 作者の瀬田貞二さんは児童文学の評論、翻訳、創作、そして瀬田文庫を開き家庭文庫運動にも尽力した子どもと本のエキスパートです。現在の子どもの本の礎を築いたといっても過言ではないと思います。いわば子どもが物語をどう楽しむのかを知っている瀬田さんの作品は時代を超えて子どもたちを物語の世界へ誘ってくれます。主人公のまみこちゃんは朝玄関でお母さんに「しーらないの しらないの しらなきゃ階段3だんめ〜」と歌いながら学校へ出かけます。この「しーらないの〜」のフレーズと赤い紐の手紙を次々探し出す展開に子どもたちはあっという間に物語の中に入り込みます。まみこちゃんが小学生であることはランドセルを背負った姿で説明され、絵で説明できるところは絵に任せ文章は過不足なく流れるように物語は進みます。そして林明子さんの描く子どもはその仕草も表情も魅力的でまみこちゃんのわくわく感を説明的でなく感じさせてくれます。赤い紐の手紙を思いついたまみこちゃんに感心したり誘発されたりするであろうこの内容は、自分で読むのにぴったりです。主人公がひとりで計画し実行する内容だからです。そして次はどうなるだろうと思わせる内容は自然と物語の展開に注目することができ、筋を追うことが苦もなくできます。もちろん親子で楽しむこともひとりで読むのとは別の楽しみが生まれるので、親子の読み聞かせで楽しんでもいいと思います。その上で読んでもらったこととは別に自分で読んで欲しい本です。読み始めの子どもたちに必要なことがギュッと詰まった作品だと感じています。