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困った時こそ

 先行きが見通せず、どことなく不安な時代になってきています。災害なども未曾有という言葉が繰り返し使われる事態となり困難な時代だと私たちに印象づけている感じがします。そして財政基盤が盤石とはいえないどころか経済的に困窮しつつある感じがより不安を増大させていると感じます。

 けれどこんな時ほど図書館が力を発揮するのではないかと考えています。図書館は資料を保存しています。どんな状況になっても資料の提供が可能なのです。以前、国立国会図書館開館70周年記念展示会「本の玉手箱―国立国会図書館70年の歴史と蔵書―」に行きました。非常に興味深くさすが国立国会図書館という内容でしたが、太平洋戦争中、蔵書の疎開を計画していたということに驚きとともにあれほどの困窮の中でも資料を守ろうとした人たちがいたことに図書館の底力を感じました。そしてここまでではなくとも資料保存があってこそ提供が可能になります。

 加えて図書館は直接的な解決策を提示するのではなく、今の時代を生きる私たち一人一人が時代に合わせた解決策を探し答えを考えていくための場所です。答えがないと思える時こそ人間の出番です。そして正解はもしかしたら一人一人違うのかもしれません。これをやっておいたら大丈夫という正解は人工知能のような膨大なデータから解を導き出すという形で出てくるのかもしれませんが、個人の安心や満足感はそれだけでは導き出せないのだと思います。個人の安心は思考停止をせずに考え続けることでしか生まれないと感じています。そう考えると個人の安心を導き出せるのは図書館の一つの役割かもしれません。もちろん身体を動かすのが好きな人は身体を動かす事が、芸術が好きな人は芸術に親しむ事が困った時の自分が安心できる事なのだと思います。けれど個人が考えることに寄り添うのは図書館だと考えています。一つの価値観に囚われることなく物事を俯瞰し考えを深める事がこの困難な時代を生きる私たちに必要な視点なのではないかと思います。