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変わるけれど変わらない

 子どもの本に関わっていると、子どもは本質的には変わらないのだと感じます。これはおとなも多分同様で、人間の本質は時代が変わってもそう変わるわけではないのだと思います。もちろん時代が人を形作る部分はあって、そこに焦点を当てると育った時代の特色というのは一定程度あると思います。けれど変わることのない共通点というのも厳然と存在していると感じています。 

 子どもの本が時代を超えて支持されるのは、この変わらない共通点があるからだと考えています。子どもたちが50年以上前に書かれた本であっても共感し、心を掴まれていくのは人としての本質的なものに訴えかけるからだと思います。ですからイギリスの児童文学作家のジョーン・エイキンが『子どもの本の書きかた』で「子どもが子ども時代に読むのはたかだか600冊なのです。しかも、その600冊というのは、もうすべてこれまでに書かれてしまっているのです。現代には子どものための本が何百冊もあります。その多くは第1級の作品です。」と述べているのはあながち外れてはいないと感じています。そしてジョーン・エイキンは1924年に生まれ、2004年にこの世を去っていますが、多分これからもエイキンの指摘が変わることはないと思います。

 だからこそ図書館は、本を見極めていく必要があるのだと思います。子どもの個性や多様性を考慮に入れても新刊を増やしていくことだけが豊かな読書環境を作るのではないことを図書館を預かる者は忘れないようにする事が大事だと考えています。読み継いでいく本の存在は、私たちが豊かで平和な時代を過ごしている証ともいえます。また未来は私たちのありようが反映されるため切り開く事が可能でそれが希望でもあると感じています。短絡的に目先のことだけ考えずに長いスパンで考える事ができるのも、図書館運営の楽しみではないでしょうか。