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なんでも見える鏡 ージプシーの昔話ー

 『なんでも見える鏡』フィツォフスキ/再話 スズキ コージ/絵 福音館書店 はスズキコージさんの絵が印象的な大型絵本です。1989年に出版されていて辛うじて絶版ではありませんが品切れなので残念ながら手に入りません。それでも読み始めの子どもたちを惹きつけるので紹介している本です。ジプシーの若者が旅の中で出会う3種類の動物を助けるのですが、スズキさんの絵も相まってその動物たちに子どもたちは興味津々になります。そして助けた動物たちのお礼の言葉が皆同じなため、子どもたちにこれからの展開を予感させ期待感を高めます。そして若者はある王国にやってきてそこで出されている課題に挑戦します。それは「その国の王女に,見つからないように隠れる」というものなのですが、王女は隠れている相手を見つけるということに関して反則級の道具を持っているので、子どもたちは若者がどうなるのか物語の展開から目が離せないといった感じになります。ジプシーの昔話なのでジプシーの人生観なども見え隠れしますが、そういったことを差し引いても物語として楽しめます。そして本のサイズ感がスズキさんの絵の魅力を活かしていると思います。また個性の強いスズキさんの絵は一つ間違うと物語を食ってしまうのですが物語と引き立てあってより魅力を増していると感じています。この物語は実は1968年に出版された『太陽の木の枝』フィツォフスキ/再話 堀内誠一/絵  福音館書店 に入っています。この堀内誠一さんの挿絵もお話によくあっていて、本の外カバーまで計算に入れた本の装丁も魅力的なのですが、図書館では外カバーは外されてしまうので、個人蔵のものしかその魅力を味わえない上にこれも残念ながら絶版です。現在では同じくフィツォフスキ/再話の『きりの国の王女』と合本になったものが、福音館文庫 で『太陽の木の枝』というタイトルで出版されています。堀内さんの挿絵は使われていますが、サイズが小さくなったことと物語の数が増えたことで、読み始めの子どもたちに勧めたいと思えない感じです。絵本の版か1968年度版が残って欲しいのですが、子どもたちが喜んで読む本であっても放っておいて動く本ではないので買い支えないと残れないタイプの本なのだと思います。