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アーミテージさんのすてきなじてんしゃ

 読み聞かせで楽しんでも自分で読んでも楽しい絵本として『アーミテージさんのすてきなじてんしゃ』クエンティン・ブレイク/作 あかね書房 もおすすめです。ただ「本はともだち」で紹介してきて思うのは小学生なら断然自分で読んだほうが楽しめるということです。何しろアーミテージさんの発想が独特で、子どもたちを夢中にさせるのです。主人公のアーミテージさんが自転車に乗ってお散歩中に困ったことが起きるとそれを解決するために自転車を改造しいくという物語です。けれどその改造は「えっそこ?」と子どもでも思ってしまうようなものなのです。けれどアーミテージさんはあくまで真剣で大真面目に改造していくので、どうなるのか気になって目が離せない感じになります。見開きいっぱいに描かれた絵は軽快で洒落ていてどことなくおかしみを感じさせます。そして文章は必要最低限で読み始めの子どもたちにも難なく読めます。真面目になればなるほど笑いを誘うというユーモアはおとなの方が受け取りやすいのですが、クエンティン・ブレイクの絵の雰囲気も相まって上質の笑いを子どもでも受け取りやすい作品です。いかにもイギリス的な表現は、好みが分かれるかもしれませんが、子どもたちに出会って欲しいものでもあります。

 『アーミテージさんのすてきなじてんしゃ』は1997年に日本語版が出版されたのですが、現在品切れで手に入りません。時代を超える本を見極める基準として20年から25年以上読み継がれることと言われてきましたが、20年を超えてからの品切れが多いことに戸惑っています。そのため品切れや絶版が作品の力だけでなく、出版の問題も時代を超えることを阻んでいるのではないかと考えるようになりました。そして出版の問題は出版社だけでなく購入する側の問題でもあるので、他人事ではないと思っています。『アーミテージさんのすてきなじてんしゃ』も子どもたちが今も変わらずに喜んで読んでいる事実を知っているだけになんとかならないものかと思っています。