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驚きのラインナップ その2

二回配本(1954年4月)

『まいごのふたご』アイネス・ホーガン/文 野口彌太郎/絵 石井桃子/訳

 

『おかあさんだいすき 』マージョリー・フラック/作 光吉夏弥/訳

 

『ちいさいおうち』バージニア・リー・バートン/作 石井桃子/訳

 

『ナマリの兵隊 』ハンス・アンデルセン/文 マーシャ・ブラウン/絵 光吉夏弥/訳

 

『 海のおばけオーリー』マリー・ホール・エッツ/作 石井桃子/訳

 

『金のニワトリ』エレーン・ポガニー/文 ウィリー・ポガニー/絵 光吉夏弥/訳

 

第三回配本(1954年9月)

『どうぶつのこどもたち』サムエル・マルシャーク/文 チャルーシン+レーベデフ/絵 石井桃子/訳

 

『 おそばのくきはなぜあかい』石井桃子/文(日本昔話) 初山滋/絵

 

『もりのおばあさん』ヒュー・ロフティング/文 横山隆一/絵 光吉夏弥/訳

 

『アルプスのきょうだい』 ゼリナ・ヘンツ/文 アロワ・カリジェ/絵 光吉夏弥/訳

 

『百まいのきもの』 エリノア・エスティーズ/文 ルイス・スロボトキン/絵 石井桃子/訳

 

『村にダムができる』クレーヤ・ロードン/文 ジョージ・ロードン/絵 光吉夏弥/訳

 

 創刊時の岩波子どもの本の素晴らしさの源に編集の能力の高さがあげられると思います。編集の力は文章、絵をどう選びどう組み合わせるのか編集者のセンスが隅々まで現れます。岩波子どもの本では翻訳作品も多く日本語版を作るにあたって独自に挿絵をつけたり、複数のお話を組み合わせて一冊の本にしていたりします。

 現在著作権が遵守され、作者の権利を読者も含めて意識する様になってきて、原作者が絵をつけているにもかかわらず、独自の挿絵をつけることに違和感を感じる人もいると思います。けれど70年前に出版されていることを考えると許されないことと簡単に断じるのは早計だと感じています。そして調べていくと原作と判型が違うこともあり、絵自体を岩波子どもの本バージョンとして修正を加えている作品もあります。どこまでが許される行為なのかは作者の許諾にかかるのでしょうが、翻訳の問題も含めて作者が母語でない言語になった絵本のニュアンスを評価するのはデリケートで難易度が高い問題です。著作権は権利の中でも作者の利益を守ることに比重が置かれているので、岩波子どもの本のように、出版社が自国の子どもたちが手にとって読むことに比重を置いた本を作るというのは難しくなってきているのだと感じます。