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驚きのランナップ その3

第四回配本(1954年12月)

『ひとまねこざる』H・A・レイ/文・絵 光吉夏弥/ 訳

 

『はなのすきなうし』マンロー・リーフ/文 ロバート・ローソン/絵 光吉夏弥/訳

 

『こねこのぴっち』ハンス・フィッシャー/文・絵 石井桃子/訳

 

『九月姫とウグイス』サマセット・モーム/文 武井武雄/絵 光吉夏弥/訳

 

『ツバメの歌 』レオ・ポリディ アン・ノーラン・クラーク/文 レオ・ポリディ/絵石井桃子/訳

 

『どうぶつ会議』エーリヒ・ケストナー/文 ワルター・トリヤー/絵 光吉夏弥/訳

 

 石井桃子さんはこの「岩波子どもの本」の発行に先駆けて1950年から「岩波少年文庫」の編集企画を任されています。「岩波子どもの本」は岩波少年文庫を楽しむ以前の子どもたちを読書に誘うことを念頭に作られ、時代を越えて読み継がれる児童文学の宝庫ともいえる岩波少年文庫の基盤を支えようとしました。その様な位置づけの「岩波子どもの本」はぶれることなく物語の楽しさが味わえるものが揃っています。これだけのラインナップが出版から70年もの間、子どもたちに読み継がれているのは石井さんを始めとする岩波子どもの本の編集方針と目利きの素晴らしさを証明するものです。また石井桃子さんの年譜を辿ると1954年8月からロックフェラー財団の研究員として留学し1955年9月までアメリカからヨーロッパを視察していらっしゃいます。そのためこの第4回の配本までが、石井桃子さんが直接編集に関わった「岩波子どもの本」だというのもこの充実ぶりの理由ではないかと思います。

 石井桃子さんは編集者として、翻訳家として、そして作家として活躍され、日本の児童文学の世界に多大な功績を残されたことは広く知られていますが、こうやってピンポイントで振り返るとその業績に自分がどれだけ恩恵を受けているのかを強く感じます。そしてそれは次の世代にも繋げていける財産であり、子どもの読書を考える際に私たちを導いてくれるものだと感じています。