· 

話すタイプの本の紹介

 「本はともだち」事業などで本の紹介をしていて、話すタイプの本の紹介には「聞いて理解できる」という視点が欠かせないのだと思います。「聞いて理解できる」というのは文字を必要とせずに聞くだけで伝わるということです。けれど話すタイプの本の紹介に慣れていない人は、内容を正確に伝えようとして物語の展開にさほど必要がない部分まで丁寧に説明しすぎる傾向があります。そのため紹介を聞いている側は伝えられる情報量が多すぎてそれを頭の中で処理することに精一杯になり物語の設定だけで完結してしまうのです。物語は先がどうなるのだろうと思ってこそ読んでみようと思えるものです。設定でお腹いっぱいになってしまっては先への思いは生まれませんし、すごくおもしろいという言葉で飾っても紹介されている側はそうなんだと思うだけで読みたい気持ちに繋がらないことも多いのです。そのためリーフレットなどに仕立てる読むタイプの本の紹介と話すタイプの本の紹介では説明の仕方が違うと考えています。これは私が、ストーリーテリングから出発して本の紹介をしているから思うことかもしれませんが、聞いて理解できるということ抜きに内容を伝えることは難しいと思います。

 「聞いて理解できる」のお手本となるのが聞くことで楽しまれ伝承してきた昔話です。昔話は物語に推進力があります。どこかの場面で留まって反芻しないことが前提だからです。そのため説明もシンプルで言葉から無理なくイメージできるように作られています。物語の始まりは大抵「むかしむかしあるところに」です。時代も場所も物語の展開に関わらない限り具体的なことが語られません。そして登場人物の名前も必要最低限に抑えられています。例えば赤ずきんにも名前があるのでしょうがかわいい女の子として登場し、おばあさんがくれた赤いずきんをいつもかぶっていたので赤ずきんと呼ばれていたと紹介され、赤ずきんという名称で物語が進みます。このように物語の展開に必要なことやものは繰り返し語られ物語を進めていくのです。話すタイプの本の紹介をする時にはこの何が物語を進める力になっているのかを見極め、整理できることが重要です。そしてそこを掬い上げて説明すると物語の展開に興味を繋ぐ紹介になると考えています。