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今だから図書館を考える

 図書館を必要としていて生活に欠かせないと思っている人は市民という括りで考えるとほんの一握りの人たちだということを最近改めて感じています。図書館があったら使うし、なかったらなかったでなんとかなると思っている人、使ったことがない人、図書館がなくても困らないという人もいるのだと思います。図書館に関わった活動をしているので認めたくない思いもあり、普段は直視しないようにしていますが、残念ながらこれは事実だと思います。

 コロナ禍で生活の変化を余儀なくされ対応に追われてきましたが、本当の変化はこれから起こるのではないかと感じています。コロナ禍の期間が長くなるにつれて価値観の再構築が行われると予想しています。必要だと思われていたことが、本当に必要なのかという問いにこの時代に生きる私たちは向き合うことになりそうです。そして人口減少で財政規模が縮小することを見越して対策が考えられてきていますが、コロナ禍で私たちの生活自体でも収入が不安定になったり、業績悪化によって失業に追い込まれたりし始めています。残念ながら人口減少以前に財政規模は縮小していく気配です。

 こんな中で私たちも、なぜ図書館が必要なのかを時代に合わせて再評価する必要があると考えています。そしてこの不安定で先の見通しが立ちにくいこの時代にあって図書館がどうあるべきなのかを考えることは図書館の未来につながることだと感じています。豊かな時代も困難の時代も人間の生きてきた足跡は図書館の蔵書を紐解くことで辿ることができます。ひとりですべて読み解くことができなくてもたくさんの人が様々な本を読むことで未来を切り開くヒントを見つけることができるかもしれない施設です。そして人との接触を減らすことで命を守ろうという方針でひとりの時間が以前より増えている今は図書館が支持されるチャンスの時期なのかもしれないとも思います。アルコール消毒が日常的になったため、誰が手にしたかわからない図書館の蔵書を敬遠する向きもあるかと思いますが、図書館の本までウィルスを理由に敬遠するとしたら何も触れられないと思ったりもします。こんな時期だからこそ図書館について考えてみたいと思っています。