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物語の展開を見極める

 読み始めの子どもたちに紹介する本を選ぶ時に注意していることは、子どもたちが物語の展開に興味が持てるのかということです。読書を考える時におとなはどうしても物語の持つメッセージに注意が行きがちです。それはおとなは読むこと自体に不自由がなくエネルギーを必要としないからだと考えています。一方読み始めの子どもたちは、読むこと自体にエネルギーを必要とします。活字を追い内容を受け取っていくことが自在にできるわけではないのです。そこで読み進めることを促進するための材料として物語の展開が重要になると考えています。

 物語の展開で一般の本より子どもの本が軽んじられる時に「子どもだまし」という言い方がされることがあります。物語の展開がご都合主義でなんの伏線もなく魔法などが多用され、おとなが読むと突っ込みどころが満載だという意味で使われていると思います。けれどこれは子どもの本に限らず一定程度ご都合主義が容認される物語への需要があると感じています。何も考えずに読めますしストレス発散にもなるので、このタイプの本を読んだ経験はおとなにもあると思います。ただこういったご都合主義の物語を読んでも長い目で見ると子どもたちが読み進めることを身につけるための力にはならないと考えています。こういった本を読んではいけないということではなく、こういった本はどちらかというと読み進めることが苦もなくできるようになってからの選択肢の一つだと考えています。

 ここで問題になるのは、どれがご都合主義の物語でどれが違うのかという見極めです。読み慣れていないと昔話などもご都合主義と一括りにされることがあるのです。昔話のような伝承のものは物語の展開に必要なことしか語られません。一見ご都合主義に見えるような展開もその場面ではこの選択しかないという必要に迫られたことだというのは昔話を読み慣れると感じられるようになります。まずは子どもたちの読書にどんな物語を勧めたらいいのかを考える前にご都合主義なのか必然の展開かを見極める習慣をつけることが大事だと考えています。