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小学生が本が選べないということ

 小学生は時間割の中で図書館の時間が週一回確保されています。移動教室のようにクラス単位で図書館へ行って本を選んだり読書する時間として活用されます。授業時間に組み込まれていることで図書館を利用することや読書することが習慣化する効果が期待できると感じています。クラス単位で活動するので図書館の時間に本が選べないといつまでも書架を巡っていることになり目立ちます。そこで選べない子にどう対応するかというのは学校司書の悩みでもあります。

 本が選べない理由はざっくり分けて2つだと考えています。ひとつめは読書の楽しみ方を知らない場合です。言い方を変えると本と物語を楽しむことが一致していないためでしょうか。自分で本を読むにはある程度の忍耐力が必要です。それでも読みたいという意欲を持つことがその忍耐力を支えます。本を読むと楽しいという感覚があってこそ本を読もうと思え本を選ぶことができるのだと思います。本が楽しいことを伝える手段として読み聞かせが広く取り入れられていますがそのためには読んでもらう回数と短期集中ではない長い時間が必要です。暗記するほど繰り返し読んでもらったり毎日読んでもらうのが絵本の本来の姿だと考えています。今小学校で取り入れられている読み聞かせは繰り返し読んでもらった経験の先に成り立つタイプの読み聞かせだと感じています。たっぷり読んでもらった体験がない子どもたちにとって本のおもしろさというよりは読んでもらっておもしろかったという経験にしかなっていないのではないかと考えています。

 ふたつめはこだわりが強い場合です。本に限らずに興味の対象となるものがピンポイントなタイプの子に多く見受けられます。そのためその子の興味対象を扱った本が図書館の蔵書にあれば対応できますが、ない場合に勧める本がないという状況に追い込まれます。けれど注意深く観察するとその子の興味対象を扱った本であっても読書に没頭するかといえばそうでもない場合が多いと感じています。興味対象がピンポイントの場合その子の知りたいことだけが詰まった本という形になりにくいこともあり、どう読んでいいのかに戸惑っている様子を目にします。そのためやはり読書の楽しみ方を知らないというひとつめにあげた理由と同じところにも問題があるのだと考えています。

 そのため集団で活動する学校という場でしかできない方法でこの読書の楽しみ方を伝えていくことを考えることが解決策につながると思います。家庭でたっぷり読み聞かせを聞いて育つことが理想だとしてもその環境に恵まれなかった子どもたちが読書の楽しみを知ることができないわけではありません。アプローチの仕方は一つではないと思います。その年齢だからこそ、また学校という集団で活動する場だからこそできる代替えの方法があるはずだと考えています。「本はともだち」事業も自分で読む楽しみを伝えるという読書の楽しみ方を学ぶ機会のひとつです。子どもたちが読書をする場に立ち会うおとながそれぞれの立場で工夫を凝らすことが大事だと考えています。小学生という伸び代がたっぷりある世代に読書の楽しみを伝えることは未来への希望につながるとても楽しいことだと思っています。