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なんのために

 私は読み聞かせの講座を頼まれることが多いのですが、受講者の皆さんに必ず伺うことがあります。それは「なんのために読み聞かせをするのか」なのですが、この質問に戸惑われる方が多く逆になんでこんなことを聞かれるのか不満に思われる方もいらっしゃいます。なんのためにと考えることは読み聞かせをする目的を自覚する効果があります。漠然といいことだと感じるからで留まらずに自分の目的を整理することが大事なのだと考えています。

 これは図書館を考えるときにも有効な視点です。図書館の機能は利用者の求めに応じることやハンディキャップ等困難を抱えている人を含め様々な利用者に対応できることなど利用者の利便性を高めることで構築されてきました。図書館の機能は「いいこと」で必要なことだらけなのです。そのため「いいこと」だからという理由で作業をしていてはその仕事量に対応できません。図書館の仕事は天井知らずでどれだけ時間と労力を注いでもキリがないものだという側面があります。そして雇用の関係でやることや時間が区切らられていくので個々が目的意識を持つ必要がないと思われているかもしれません。けれど図書館の様な利用者と共にあることで成り立つ施設は個々の目的意識も必要だと考えています。

 まずは「なんのために図書館に関わるのか」と考えることで図書館に関わる自分自身の目的が整理できます。あれもこれもとやらなければならないことを挙げていくのではなく、どうしたいのかをシンプルに考えてみてください。すると図書館に関わる際に自分が譲れないことや守りたいことが見えてくると思います。そして自分がやりたいことがはっきりしたら、その目的が活きる様な仕事の仕方を考えてください。それぞれ立場があり、やりたい形で業務にあたるには制限がかかることも多いと思います。けれどそういった制限が目的を達成するための足かせにはならないと考えています。自分に任されていることで目的をどう達成していくのか考えることが大事なのだと思います。華々しい成果や即効性が期待できなくても目的を明確にして自分の仕事をこなしていくことは図書館が存続していくことに必要で息長く小さな力が集まって支える感じは図書館らしいと思います。